ミユとレイのてんしとあくま Vol.2
―趣味の悪いピエロがこちらを見ている。―
なんか怖い。なんか危ない。本能がそう告げている。
逃げなきゃいけないのに、ミユは、あまりの恐怖で声が出ない。
だれも、ピエロに気が付いていないのか。時が止まっている。誰かが落とした消しゴムも宙に浮いている。この無風の中、友人の髪が風でなびいてるように見える。
どうしようもなく身動きがとれないでいると、ピエロは教室内を見渡し、突然甲高く気味の悪い声で笑い始めた。
「キャッハハハハハハハ!!!見つけましたよオヒメサマァ!才色兼備で周囲の人々からも慕われる完璧ニンゲン!そんな貴方が悪魔になったら、きっと楽しい世界に変わっていくでしょう!ワタシが導いて差し上げますよォ!」
名前を言わなくても、誰の事かすぐに判った。
(レイさんが危ない!)
いつもそっけなくしていたけれど、本当はもっとお話をしたかった。もっと親しくなりたかった。
願わくば・・・
「せいっ!!」
きっと、この気持ちは・・・
ピエロは、どす黒い光の玉を彼女に投げつける。
(レイさんを・・・守らなきゃ!動いて!私の体!!)
恐怖心よりも、目の前の彼女を守りたい気持ちが大きくなった。その瞬間、ふっと体が軽くなり、彼女の元へ駆け寄る。
(お願い!間に合って!!!)
強く願ったその瞬間、あたりはまっくらになった。